数合わせの障害者雇用 みんなが不幸になる実態

数合わせの障害者雇用 みんなが不幸になる実態

2018年、中央省庁で障害者雇用数の水増し問題が発覚した。

我が国では障害者雇用率制度というものがあり、国や公共機関、一定規模以上の民間企業は障害者を雇わなければならない。その数は対象によって異なるが、2パーセント以上と定められている。従業員が百人いれば、少なくとも二人は障害者でなければならない。

この制度、多くの行政機関や教育委員会は守る気がなかったようで、ほとんど障害者を採用していなかったし、それでも問題がないように数字を改竄していた。

障害者雇用は何のため?

ある地方公共団体ではこの障害者雇用率を達成するため、現在働いている職員に障害者手帳の取得を求めている。在職中の職員が障害者になれば、何もせずとも障害者雇用率を達成できるからだ。そして、そういう組織は障害者雇用率をきちんと達成していますとアピールする。

しかし、その場合は書類上の障害者が増えただけで、新たに雇用された障害者はいないことになる。それでよいのであれば、何のために障害者雇用率制度ができたのだろうか。

一般に障害者は健常者よりも仕事をする上で不利になることが多い。あるいは不利にならなくても、障害があるというだけで採用されにくいのが現実だ。かといって、障害を隠して就職活動をすることも難しい。後からバレたらクビになる可能性もある。

厚生労働省によると障害者雇用率制度は「障害者がごく普通に地域で暮らし、地域の一員として共に生活できる社会を実現する」ためにある。障害者のための制度でなければ意味がない。

追い出し部屋と同じ状態に

問題が発覚したため、中央省庁は大量の障害者を採用することにした。

そして、多くの障害者が仕事になじめずに退職している。仕事をほとんど与えられなかったとか、障害の程度に応じた配慮がされていなかったという理由だ。

こう聞くと「仕事をせずに座っているだけで給料がもらえるなら、最高ではないか」と思う人がいるが、これが実際にやってみると非常につらいのである。

もちろん、漫画を読んでいてもかまわないとか、ユーチューブを見ていてもよいのならば何とかなるのだが、同じ部屋、隣の席や前の席の同僚や上司は仕事をしているわけである。あからさまにサボっているわけにはいかない。

実際、大手企業が社員を自主退職させるために用意する「追い出し部屋」も、たいした仕事を与えずに退職させるという手法をとっている。何もしてならないということは、人間にとって耐えがたい苦痛なのだ。

そして、何も仕事をせずに座っているということは、自分が必要とされていないと痛感することになる。コミュニティとの関わりがそんな状態では、毎日通勤するのが苦痛で仕方ないだろう。

目的は数合わせ

同僚や上司のほうは別に障害者に辞めてほしいと思っているわけではない。それでは、なぜこんな嫌がらせが起きるのか。

それはもちろん、仕事をしてもらうために雇ったのではなく、数合わせのために雇ったから。採用担当者は自分が怒られないように障害者を採用し、現場に押しつける。押しつけられた現場は、特にやってもらう仕事がない。

仕事をしてもらおうにも、簡単に任せられる仕事はほとんどない。すでに働いている人たちは採用試験に合格して働いているわけで、一般に能力が高いことが多い。対して、数合わせのために大量採用された人は能力が認められて採用されたわけではない。

また、上司はどこまで仕事を与えてよいのかもわからない。聴覚障害者は電話には出られないし、仕事を頼むときも筆談で伝えなければならない。精神障害者の場合は、どの程度の仕事を与えればよいのかわからない。また、仕事でミスをしたときも健常者相手のように怒ったりしてもよいのかわからない。

結局、そんなことを気にしていては仕事を頼むこと自体を避けるようになる。こうして、今日も障害者は追い出し部屋同然の職場で疲弊して、退職に追い込まれていく。

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