反出生主義 アブラハムの宗教と仏教の対比

反出生主義 アブラハムの宗教と仏教の対比

哲学者ショーペンハウアーは反出生主義者だった。反出生主義とは「生まれてこない方がよかった」という考え方である。

この世界で自分の思い通りになることはなく、生まれてくることは苦痛でしかない。子供を作れば、子供に苦しみを与えることになる。だから、子供は作るべきではない。

アブラハムの宗教

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教はまとめて「アブラハムの宗教」と呼ばれる。アブラハムは聖書の「創世記」に登場する人物である。

創世記はユダヤ人の歴史が語られる部分で、それによるとユダヤ人は神に選ばれた人である。アブラハムは神に選ばれた預言者であり、ユダヤ人の始祖でもある。

キリスト教やイスラム教でもこの「創世記」の部分は共通しているので、三つの宗教は「アブラハムの宗教」と呼ばれる。

これらアブラハムの宗教では、子供を産むことは「善」である。神が世界を造ってから六日目のとき、人に向かってこう言ったからである。「産めよ、増えよ、地に満ちよ」と。

神がそう言った理由は特に書いていない。しかし、理由など必要だろうか。神が言ったのだから間違いはないのである。ちなみに神は人間が増えすぎると、洪水を起こして大部分を消し去ってしまった(ノアの箱舟)。

大日本帝国も人が増えることを「善」とした。「産めよ、増やせよ」をスローガンにした富国強兵政策を推進した。ヒトラーもドイツ人を増やすために数々の政策を打った。

ブッダの思想

一方、ブッダを創始者とする仏教の考えでは、子供を作ることは「善」ではない。

この世の四つの大きな苦しみは「病に苦しむこと」「歳を取ること」「死ぬこと」に加えて「生まれること」としている。

世の中は苦しいことばかりで、決してその苦しみから逃れることはできない。仮に死んだとしても、輪廻転生で再び生まれてしまい、苦しみを受けなければならない。

仏教の目的はこの繰り返される苦しみから逃れることである。

この考えは明らかに「反出生主義」である。生まれることで苦しみが始まるのだから、だったら生まれなければ良い。といっても、自分はもう生まれてしまっているから、子供を作らないことが最大限努力できること、というわけだ。

ショーペンハウアーも東洋思想から影響を受けていたとされる。

輪廻転生はブッダが最初に考えた思想ではなく、インドで古くから信じられている思想である。ブッダはインド出身なので、インドの考え方をもとに仏教を創始した。

インドでは現地の信仰が深く浸透していたので、ブッダの考えはあまり受け入れられなかった。インド人の多くはヒンドゥー教を信じていて、仏教はインド発祥でありながら、インドではあまり信じられていない。

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