農耕は人類を不幸に陥れた 小麦と稲に支配される人類「サピエンス全史」

農耕は人類を不幸に陥れた 小麦と稲に支配される人類「サピエンス全史」

「農業革命」という言葉は、一般に18世紀頃のイギリスで起きた現象を指す。資本家が土地を独占し、金を払うことで人に労働させるという方式で、農作物の生産量が飛躍的に増加した。

ユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史」では、「農業革命」は人類が狩猟時代から農耕を始めたことを指している。農業の方法が革命的に変化した事件ではなく、農業を始めたことが革命的だという意味らしい。

とてもおもしろい語り口で、読みやすい本だ。

パンドラの箱を開けた人類

かつて人類は狩猟によって食料を得ていた。集団でイノシシを狩ったり、マンモスを狩ったり、木の実を集めたりして生活していた。現在の価値観からすればかなり大変そうだが、実はそんなに大変ではなかったという。

いろいろなものを食べていたため、特定の栄養不足になることは少なかった。ひとつの食べ物が得られなくなっても、別のものを食べればそれで済んだ。その地域から食べ物がなくなったら、別の地域に移動すればいい。

当時は人間の数も少なかったから、他の集団と出会うこともほとんどなかった。

人類が農業を発明してしまったことで、状況は変わった。著者によれば、それは「パンドラの箱を開けてしまった」のだという。

小麦や稲の収穫には時間がかかる。毎日世話をしなければ枯れてしまうので、休まずに労働しなければならなくなった。同じ土地に住み続けなければならないので、災害や疫病に弱くなった。

縄張り争いも始まるようになったし、せっかくの農作物を盗まれないように見張っていなければならなくなった。不作の年には大量の餓死者を出すことになった。

農作物が駄目になればその家族や村はおしまいなので、毎日おびえながら生活しなければならなくなった。衛生状態も悪化した。人口は増えたが、ますます飢餓や争いが増えることになった。

小麦に支配される人類

「現在地球上で最も繁栄している生物は人類ではなく、小麦である。小麦自身が何もしなくても、人間が勝手に育てて世話をしてくれる。まさに人類は小麦の奴隷になった」

この文章はおもしろい。

現代の価値観は「科学万能主義」が根強い。科学的な裏付けを得ること、新たな技術の獲得こそが正義だと思われがちである。

人類は常によい状態へと進歩を続けてきた。そう考えると、狩猟時代から農耕時代への進化は「不安定で野蛮な時代」から「進歩した計画的な時代」への進歩だと思ってしまう。

しかし農耕時代に入ってから、人々に社会的階級が作られたとされている。支配する人間と支配される人間に分かれたのである。

サピエンス全史ではこれを「人類がパンドラの箱を開けてしまい、不幸へと進むことになった」と表現している。農業革命によって人類は不幸になった、というわけだ。

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